ささやかな風景 #15 −二十六夜俟−

膳の上には朱塗りに金彩の三段重。
その横には同じ模様の杯と提子(ひさげ)。
床の間には鏡餅。
入り口にはしめ縄。
すっかり正月の準備が整っている。

板戸を開ければ、昨日から降り出した雪が庭を白く染めていた。

「まだ雪ぃ降ってる」

振り返って養い親を見れば、

「そうか」

と、穏やかな返事が返った。
子供は板戸を開けたまま、養い親の元へ戻り、その膝の上に身体を預けた。

「どうした?」

何時にない甘えた仕草に頭を軽く撫でれば、

「えっと…あけまして、おめっっとう…ごじゃいましゅ」

と、養い親の顔を見上げて子供が言った。
それに一瞬、紫暗を見開いた後、養い親はふわりと綿雪のような笑顔を浮かべた。
そして、

「ああ…今年もよろしくな、悟空」

そう言って、子供の頬に口付けを落とした。

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