ささやかな風景 #17 -Gap- |
「信じらんねぇ──っ!」 雄叫びのような声が上がると同時に物が叩き付けられる音が隣室から響き渡った。 「怒ってますよ?三蔵」 その音を嬉しそう聞きながら、光明は優雅な手つきでカップを上げる。 「──っ…誰の所為ですか、誰の…」 しれっと小首を傾げてみせる。 「総帥…」 気力を振り絞って呼べば、 「光明です、三蔵」 常々言われている注意が返り、三蔵の頬に朱が刺す。 「──…!ぁ…光明さま」 呼び捨てにしろと言われていることも失念して、 「光明」 と、呼べば、澄ました顔で訂正された。 「───っ!こ、みょう…」 言えば、 「良くできました」 と、嬉しそうに光明が笑った。 「ご褒美に連れて帰っていいです」 その言葉を聞くなり、三蔵は頷くよりも早く、隣室へ走って行った。 「せっかくの新年会なのにねぇ…もったいない」 残念そうにため息を吐き、 「ラブラブですねぇ」 と、喉を鳴らして笑ったのだった。 |
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