ささやかな風景 #18

「三蔵、あれ何て言うの?」

三仏神からの仕事の帰り、途中まで迎えに来ていた悟空との帰り道、道沿いの家の塀。
悟空が指差す先を見れば、冬の薄日に透ける黄色い花があった。

「ガラスで作ったみてえ…な、あの黄色い花、何て言うんだ?」

衣の袂を引いて、悟空が急かす。

「あれは…蝋梅ってんだよ」
「ろ…ばい?!」

聞き慣れない言葉に悟空が不思議そうに小首を傾げた。
三蔵はその姿に仄かな笑顔を浮かべた。

「花が…蝋細工のように見えるからそう呼ぶらしい。梅の花だよ」

くしゃりと、そう言って頭を撫でれば、くすぐったそうに悟空は首を竦めた。

「じゃあさ、甘い匂いがするのか?」

と、見上げてくる視線に、

「さあな…でもま、春が近づいてるという知らせではあるかもな」

と、告げた。

「そうなんだ…」

ふわりと、三蔵の言葉に笑って、悟空はまた、冬日に透ける蝋梅の花を見上げた。

close