ささやかな風景 #19 |
「冷てぇ…」 そう言いながら、三蔵が白衣に水を滴らせて帰ってきた。 「悟空、三蔵様がお湯から上がられたら、お茶にしましょうか?」 って。 「うん!」 嬉しくて頷けば、笙玄の優しい笑顔が返ってきた。 「今年初めての草餅ですよ、悟空」 言われて、頷いて、草餅を囓った。 「悟空には”上巳の祓”よりは”草餅の節供”のほうがいいようですね」 そう言って笑うから、三蔵の顔を見れば、 「そうだな、禊ぎよりは食い気だしな」 三蔵も笑う。 「何だよ、それぇ…」 むくれて問えば、 「今頃はちょうど、草餅に欠かせないヨモギの新芽が出る頃だから、そう言うんです。”上巳の祓”の別名である”桃の節供”の別名です」 そう、笙玄が説明してくれた。 「草餅の節供、かぁ…おもしれぇ」 そう言って笑ったら、三蔵がちょっと呆れた顔をした。 |
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