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ささやかな風景 #24

「こら、こんなところで寝るな、サル」
「─……ん、ぁ…うん」

梅雨の中休み。
青く晴れた空は高く、からっと乾燥していた。

三蔵の仕事も梅雨と同じように中休みなのか、今日は早くに片づいたらしく、寝所に戻ってきた三蔵は居間の入口でうたた寝をする悟空を見つけた。
思わずその身体に躓きそうになった三蔵は、軽く蹴って起こす。
が、気持ちいいのか、現に頷くだけで悟空は起きようとはしなかった。

「邪魔だ、どけ」
「うにゅ……ぅ…」

三蔵の言葉に妙な声で応えて、悟空は身体を丸めてしまう。
その寝汚い様に、三蔵は大きなため息をこぼすと、早々に起こすのを諦めた。
そして、悟空の身体を跨ぎ越して居間に入った。
そこへ、笙玄が洗濯物を持って入ってきた。
が、抱える山のような洗濯物で前も足許も見えない。
三蔵が声を掛ける間もあらばこそ、笙玄は入口で眠る悟空の身体に蹴躓いた。
それはもう、見事に。

「うわっ!」
「うぎゃっ!」

同時に上がった声と物音。
一部始終を見てしまった三蔵の目の前に洗濯物が降り注いだ。

「──ってぇ…」
「あたた」

今の衝撃で目が覚めた悟空が痛そうに身体をさすりながら身体を起こし、床と抱きあう形で転んだ笙玄も痛む身体を起こして床に座り込んだ。
そして、

「あ、ご、悟空!だ、大丈夫ですか?」

と、自分が何に蹴躓いたのか知った笙玄が慌てて悟空を覗き込む。

「…えっ?!…ぁ…ああ!!」

笙玄の言葉に悟空は何がどうなったのかようやく理解し、大声を上げた。
その途端、乾いた音が炸裂した。

「ってぇ!」

殴られた頭を押さえて振り返れば、三蔵がハリセンを握りしめて立っていた。

「なにすんだよっ!」

怒鳴れば、

「んなとこで寝こけてたてめぇが悪いっ!笙玄に謝れ、サル」

返事と一緒にまた、ハリセンが悟空の頭で乾いた音を立てた。
その言葉に自分の周囲と床に座り込んだ笙玄を交互に見やって、その有様に瞳を見開いた。

「わかったか、バカ」

言われて、頷けば盛大なため息が三蔵からこぼれ落ちた。

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