ささやかな風景 #28 −共に闘う10のお題 01:背中合わせ/配布先:七色の橋を渡って

「なあ、いつもより数が多い気がする」

悟空の問いかけに三蔵が目の前に迫った妖怪の眉間を撃ち抜きながら答える。

「サルにしちゃあ、いい感してやがる」
「何だよっ!サルって言うな!!」

ぶんっと如意棒を横に振って、刀を振り上げて飛び込んできた妖怪を薙ぎ払う。

「サルにサルと言って何が悪い?」

言いながら三蔵の銃が続けざまに火を噴き、何人かが血を吹き上げて倒れた。

「わりぃって!──じゃなくてっ」

喉元目がけて突きを繰り出し、身体を捻って横からの攻撃をかわす。

「数だよ、数っ!」

突き出した如意棒をそのまま勢いを利用して半円を描くように振り回し、自分を取り囲もうとしていた動きを牽制した。

「多いな、確かに」

銃のグリップで間近に迫った妖怪の顔面を殴りつけ、よろめいた所を蹴り倒して三蔵はようやく周囲を見回した。

「な、多いだろ?」

我が意を得たりと、悟空が身構えて笑顔を見せれば、

「威張ってんじゃねえ」

と、三蔵は嫌そうに眉間の皺を深くした。

「威張ってねぇって」

思わず三蔵を振り返った悟空の頭越しに銃声が響いた。

「…っ!」

首を竦める悟空に三蔵の罵声が飛ぶ。

「気ぃ抜くんじゃねぇ!」
「ゴメン」

殊勝に謝って、悟空は如意棒を構え直した。

「謝る暇があったら少しでも倒しやがれ」
「おうっ!」

三蔵に頷きながら、飛びかかってきた妖怪を如意棒の一振りで地面に叩き付けると、悟空は改心の笑みを浮かべた。
その笑顔を視界の端に捉えた三蔵の口元にも微かな微笑みが浮かんだ。

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