ささやかな風景 #29 −共に闘う10のお題 02:敵の敵は味方/配布先:七色の橋を渡って

「何で八戒が向こうにいるんだ?」

銃口を向けられて訊かれても悟浄に答えるべき言葉はない。
だから、正直に言ってみる。
無駄な努力とわかっていても。

「さあ…あいつの魂胆なんて俺にわかるわけないっしょ」

少しおどけた素振りも付けてみれば、案の定、目の前で苛立たしげな風情の最高僧の銃口は火を噴いた。

「──っぶねえっ!」

首を竦めてよければ、

「避けるんじゃねえ」

などと、理不尽極まりない言葉が返ってくる。
そう言われても、命は惜しいわけで、まだまだしたいことはたくさんあるのだと、苛つく最高僧に説明する気力はないのだけれど。

「三蔵!」

悟浄の態度が気にくわないことも、八戒の行動の真意が読めないことも全部目の前のヤツの所為だと言わんばかりに、また、悟浄に銃口を向けた時、悟空のびっくりした声音が三蔵を呼んだ。
その声に二人して振り返れば、妖怪達の指揮官が、八戒の足許に血を流して倒れていた。

「ああ、そういうことね」

頷けば、

「紛らわしい」

と、舌打ちが聞こえ、

「ど─なってんの?」

訳がわからないと首を傾げるそれぞれがいた。

「だ─か─ら─敵の敵は味方ってこったよ、サル」

説明してやれば、

「何だよ、それぇ…わっかんねえって」

むくれた返事が返った。

「ようく考えてみろって」

言えば、戦いを忘れて考え込む。

「敵の敵は…味方?…───敵の…敵、は…み、かた…味方…」

ぶつぶつと首を傾げて考え込む姿は、すこぶる稚くて可愛いのだが、今、ここは戦場なわけで。
考え込む悟空目がけて三蔵が檄を飛ばすと同時に、悟空が大きな声を上げた。

「──ああぁ!何だそういうことかっ!」

頷いた瞬間、三蔵のゲンコツが悟空の頭に落ちた。

「…ってえ!何すんだよ!」
「ぼけっとしてんじゃねぇ!くそザル!」

三蔵の怒鳴り声に悟空は頭をさすりながら、如意棒を構え直し、戦いの中へ再び身を投げた。
終わったあとの説教はまた、別の話。

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