ささやかな風景 #3 |
仕事から戻ってみれば、寝所の居間は色とりどりの短冊で埋め尽くされて、まるで花が咲いたようだった。 その色の海に悟空が幸せそうな顔で眠っていた。 散らばった短冊。 七月に入ってすぐの時に、どこから仕入れてきたのか、七夕伝説を夕飯の時に一生懸命話していた。
その結果が、目の前の色の洪水、色の海だ。 床に散らばった短冊を拾ってみれば、悟空の汚い字で何やら書いてあった。
「本当に…あなたという子は……」 そう言って、俺が書いた短冊を見て困ったように笑っていたお師匠様の姿を思い出した。 こいつも自分のことは何もなくて。 「お前という奴は……」 のほほんと眠る楽しそうな寝顔に、俺は苦笑を浮かべるしかできなかった。 |
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