ささやかな風景 #30 −共に闘う10のお題 03:庇わなくていい/配布先:七色の橋を渡って− |
「三蔵!」 反射的に身体が三蔵の前に出る。 「三蔵っ!」 振り返った悟空の顔が一瞬、強張る程の視線が悟空を射る。 「…ってぇ」 痛みに顔を顰めて見せれば、 「死ね」 と、簡潔な言葉と共に、頬を銃弾が掠めた。 「よそ見してんじゃねえ」 片膝付いた身体を億劫そうに持ち上げて、また戦闘態勢に入る。 立ち込める鉄サビの臭いと土埃。 乾いた銃声と微かな呻き声に、悟空の意識が現実に戻る。 「三蔵─っ!!」 銃身で刃を受け止める三蔵の姿に、悟空の身体は無意識に反応する。 「三蔵!」 肩越しに振り返って見る三蔵は肩を怪我したのか、法衣に紅がゆっくりと広がっていくのが見える。 「大丈夫か?」 向かってくる敵を袈裟懸けに打ち倒して声をかければ、 「庇わなくていいっ!」 そんな返事と共に、銃声が続けて鳴り、悟空の目の前に迫っていた妖怪が血煙を上げて倒れた。 「そんな暇があるなら、さっさと片付けろ、サル」 言われて、何故か悟空の顔は嬉しそうに綻んだのだった。 |
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