ささやかな風景 #34 −共に闘う10のお題 07:目的は同じ/配布先:七色の橋を渡って− |
悟空の小柄な背中が木立の向こうに消えたのを待っていたように、三蔵はその場にくずおれた。 荒い自分の息づかいが嵐のように三蔵の耳朶を打つ。 心臓が別のイキモノになったように暴れている。 朦朧とする意識の端で、見送った少年を思った。 方向音痴だが、何とか八戒と悟浄の元へ辿り着くだろう。 義務ではなく権利だ。 だから、こんな所で力尽きるわけにはいかない。 責任ではなく意地だ。 幹に縋って身体を起こした三蔵は、背中をその幹に預けた。 「……?」 その張りつめたような静寂に気付いた三蔵の中に違和感が生まれた。 「……静か過ぎるだろ」 思わず呟いた自分の声が何かに呑み込まれた気がした。 「……何、だ…?!」 何の音もしない空間。 「……物好きな…」 そうして、この静寂の原因に気付いた三蔵の口元が苦笑に歪んだ。 「目的は…同じ…か?いや…気紛れか…」 呟いた言葉に、微かな揺らぎが返った。 「いいさ…生き延びるチャンスが増えたと思ってやるよ…」 誰に言うでもない呟きをこぼしながら、懐の銃を握った。 |
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