ささやかな風景 #41 |
使い慣れない剣を振って戦う姿を悟空は括り付けられた砦の上から見下ろしていた。 色づき始めた空の陽の光に反射して、悟空の大切な主の金糸が光る。 「……三蔵…呼んでよ…」 呟く声は三蔵に届かないはずだった。 「三蔵の…バカ…」 三蔵の声など聞こえないはずなのに、その言葉ははっきりと悟空に届いていた。 「ホントに…バカだよ」 俯いて呟くと、ゆらりと悟空の身体からオーラが立ち上がった。 「三蔵こそ自分の心配だけしてろよな」 ふるりと身体を揺すった悟空の身体の輪郭が揺らめいた。
「いい加減にしてよね」 魔法陣の中心に立つ魔導士が振り返ったそこに、封じていたはずの悟空が黄金のオーラに包まれて立っていた。 「マジ、鬱陶しいから追い回すの止めてよね」 何を言うのか。 「私の魔力があれば、お前を存分に使いこなせるのだ。わからんのか!」 魔導士の言葉に、悟空は小さくため息をつくと、悟空は魔導士に向かって無造作に片腕を振り抜いた。 それで終わりだった。 悟空の腕が起こした風は床を切り裂き、魔法陣を粉砕した。 「悟空」 三蔵の呼ぶ声に振り返った悟空が呼べば、 「あほう…」 そう言うなり、三蔵はその場にくずおれたのだった。 |
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