ささやかな風景 #5 |
三蔵と一緒に買い出しに出た。 くじ引きとじゃんけんで負けた俺と三蔵は、八戒に渡された買い出しメモを見て思わず目を剥いた。 だって、二人じゃどう見ても持ちきれない量だったから。 でも、負けた手前文句も言えなくて、三蔵と二人仕方なく出かけた。 今日の宿は川沿いにあって、川風が気持ちいい程吹き抜けるから思った以上に涼しい。
でも…… 並んで歩く俺の横で三蔵が物凄く煩そうに舌打ちした。
寺院に居る時に聞こえてきた蝉の鳴き声は煩いけど、「ああ、蝉が今日もよく鳴いているなあ…」って思うぐらいだった。
「…三蔵、耳が変になる」 三蔵の法衣を引っ張って言えば、深く寄った眉間の皺が一層深くなって、纏う空気が不穏になった。 「…さ、んぞ?」 どうしたのかと見上げれば、反対の手が懐に入って、かちりと、微かな金属音が聞こえた。 それって…もしかして? なんて、悠長に思っている間に三蔵の手は愛用の銃を懐から掴みだし、激鉄を起こしていた。 「さ、三蔵!」 止める間もなく、銃を握った手は上に掲げられ、引き金が引かれた。
「よし。行くぞ」 すたすたと歩いて行くその後ろ姿を俺は呆然と見送った。 |
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