ささやかな風景 #8

今年もまた、西の収穫祭の時期がきた。

今月になってから、悟空はそわそわと落ち着きがない。
寝所の居間には、ジャック・オ・ランタンという、カボチャを刳り抜いた提灯が歪な目と口を開けて転がっている。
これもハロウィンとかいう祭りの為なんだそうだ。
毎年、毎年、食べ物を粗末にしやがる。
終わったら笙玄が食材にするのだと言っていたことを思い出して、俺はため息をついた。

ハロウィンは十月三十一日が祭りの本番だ。
その日に「お菓子をくれないと悪戯するぞ」と、ふざけたことを抜かして、家々を廻る。
が、ココは桃源郷。
仏教徒の国だ。
ハロウィンの頃は農繁期で忙しいから、巷では菓子屋が騒いでいる程度だが、俺の周りは騒がしくなる。
なんせバカ共がお祭り騒ぎをするからだ。

で、今年は何かあるな、と踏んでいる。
そう…悟空の落ち着きのなさが、俺の悪い予感を刺激するのだ。
一体何をやらかしてくれるのか。
考えるだけで、頭痛はするは、胃が痛むは、ろくなもんじゃねぇ。

俺は書類を片付けながら、背筋を走る悪寒に、ため息を吐いた。

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