月が笑う (parallel/from 面食い吸血鬼)
ひくりと躯が揺れた。
触れる唇の熱さと冷たさに躯が火照る。

首筋の頸動脈から自分の血を貪るこの異形の少年の肩越しに見える月が白い姿を夜空に晒していた。

少年の喉が鳴るたびに背中を這い上ってくる見知った感覚に、ぞわりと肌が粟立つ。
血を与える代わりに与えられる恍惚とする性交に似た、いや、それ以上の快感。
躯を繋げるよりも赤裸々で、淫らな熱い快感。

「…んっ…ぁ」

我慢しきれずに漏れる自分のモノとは信じがたい甘く潤んだ吐息と声に、羞恥が湧く。

「も…やめっ…」

のし掛かっている少年の躯を押しても、異形の躯はぴくりとも動かず、代わりにより深くその牙が三蔵の首筋にに食い込んだ。

「…ご、く……ぅ…」

びくりと躯が強張り、三蔵は自分の意志に関係なく絶頂を迎え、吐精した。
それでも与えられるこの熱は冷めず、三蔵の躯は与えられる快感を貪るように揺れ、跳ねた。

「…っ…ぁ」

熱い吐息をこぼして、躯を振るわせる三蔵の首筋に顔を埋めた少年から、ようやく満足のため息が漏れた。
ぴちゃんと、舌を鳴らし、顔を上げた少年の口元は三蔵の血で赤く濡れていた。

「…三蔵」

その唇が三蔵の名前を紡ぐのを待っていたように、三蔵はその唇に己のそれで触れ、重ねた。

重ねた唇から、差し込んだ舌から感じる鉄さびの血の味。
吸血によってもたらされた欲望は三蔵の中で荒れ狂い、三蔵を駆り立てた。

三蔵は唇を離して躯を入れ替え、少年を己の下に組み敷いた。
そんな三蔵を見上げる少年の金瞳が嬉しそうに綻ぶ。

「いいよ…好きなだけ、抱いて?」

その笑顔は妖艶で、三蔵の欲望を煽る。

「悟空…」

苦しげな声音で名前を呼べば、

「三蔵…」

と、甘い声音で悟空が三蔵の名前を呼んだ。
お互いに名前を呼び合っては、深く貪るように口付けを交わし、三蔵は悟空の白い首筋に舌を這わせ、紅い華を刻んだ。

「…ぁん…さん、ぞ…」

三蔵の与える熱によって艶を帯びる悟空の声に、三蔵は高ぶった熱を更に燃え立たせ、異形の少年の躯を割り拓いた。

「っあぁ…いぁ…ん……ぁ」

上がる嬌声と沸騰するような熱に煽られて、三蔵は悟空の躯を貪るように抱いた。
その揺さぶられる熱の熱さに瞳を開けば、自分を組み敷く三蔵の肩越しに見える月が悟空には笑った様に見えた。

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