あの月に誓おう (parallel/from Gap) |
空が高い。 流れる雲を見ながら悟空はため息を吐いた。 中天には上弦の半月。 秋が深くなる程、気持ちは重くなる。 あれは事故だった。 「いってらっしゃい」 と、祖父と見送った父と母。 「お留守番、お願いね」 ふわりと触れた母の柔らかくて暖かい手と甘い薫り。 「おじいさまを困らせるなよ」 くしゃりと、頭を撫でてくれた父の大きな手の温もり。 それきり二人は二度と戻らなかった。 それは秋も盛りの、月の綺麗な日だった。 そして、あの日。 「一人で買い物に行きたい」 たったそれだけの───── けれど、許されるはずもなく、自分が置かれた立場をよく考えろと諭された。 でも、どうしても気持ちが収まらなくて、止める手を振り切って側を離れた。 それが何を誘発し、何を失うのか。
そして─────
戻ってきた掛け替えの無かったものは、姿形だけ同じ器となっていた。 だから、今度は自分が守るのだ。 同じで同じでないあの愛しいものを…。 テラスから一向に戻ってこない悟空を心配して、でも、そんな素振りは欠片も見せずに、怒った姿を見せた彼に悟空は仄かに笑って振り返ったのだった。 |
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