薄 氷 |
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昨夜は冷え込んだ。 今年は寒い日が何時までも続く。 いつもならもう、暖かい日が何日か続いて、山の下草も新しい芽を起こしているというのに。 悟空は傷だらけの手を谷川で洗いながら、明け始めた空を見上げて小さく嘆息した。 澄んだ水に映る己の姿。 あの日も街人に見つかって追い立てられ、袋叩きに遭った。 思い出すたびに胸が痛い。 悟空はついつい思い出してしまう川縁で出逢った公達の姿を洗い流すように傷だらけの手を水を蹴立てるように洗った。 水のかかった川縁の薄氷が冴えた輝きで、悟空を見送っていた。 |
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和の言葉を題材にして50のお題 02:薄 氷 | |
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