すっかり春らしくなりました。 寺院内の桜の木々も我先にとその艶やかさを競うように咲き誇っています。 夜が明ける時間もずいぶんと早くなって、冷え込みも緩んで楽になりました。
そう、今日は悟空の生まれた日なんですよ。
本当はいつ生まれたのかなんて、誰も知りません。 この日は、三蔵様が岩牢から悟空を解放した日なのだそうです。 二、三日前に嬉しそうに、話してくれました。 その話をしてくれる笑顔がとても幸せで、見ている私の方まで気持ちが幸せになりました。 本当に悟空がいるだけで、殺風景な風景が暖かくなります。 「笙玄ってさ、いっつも笑ってるよな。にっこりってんじゃなくって、うんと…頬笑んでるっていうのかな?そんな感じ。優しくって、暖かいんだ」 そう言ってくれました。 人の心は合わせ鏡。
「ねえ、悟空?」 私の言葉に、悟空はポカンとした顔をしたのも一瞬、大輪の花が咲き誇るようなそんな笑顔を浮かべてくれました。 「いいの?ホントに?三蔵も一緒?八戒も悟浄も?笙玄も?」 それっきり言葉を無くして、うん、うんと何度も悟空は頷いていました。
考えてみれば、悟空のお誕生日を盛大にお祝いした事なんて無かった気がします。
さあ、朝餉の準備を始めましょう。 もうすぐ三蔵様が、起きていらっしゃいます。
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