#1.寺院にて
 今日、三蔵様がいらっしゃる寺院へ月参りに出掛けました。
 本堂へ向かう道で、悟空を見かけのです。
 悟空の居る所に三蔵様がいらっしゃるのは我々の間では常識ですよね。
 慌てて悟空の後を追えば、おお〜三蔵様がいらっしゃいました。
 いつもの純白の法衣をお召しになって、威儀袈裟に経文のお姿で。
 三蔵様は気配に敏感なお方だからこれ以上は近づけないけれど、悟空とお話ししていらっしゃるお顔が柔らかくて、見ている僕まで幸せになりました。
 三蔵様の微笑みを独り占めしている悟空が羨ましいです。
 
 
#2.お気に入り
 笙玄さんが三日ぶりに寺院から降りてきているのを商店街で見かけました。
 たまたま僕もそのお店に用があってそこに笙玄さんがいたのです。
 何を買っているのかと自分の買い物をしながら覗いていると、石鹸一箱とボディーソープ一瓶、シャンプーに歯磨き粉、歯ブラシとかを買っていました。
 石鹸のブランドは○乳石鹸、ボディーソープも同じでした。
 ごく普通の石鹸をお使いだったなんて知りませんでした。
 シャンプーも歯磨き粉も歯ブラシもごくありふれたブランドでした。
 三蔵様は庶民的でいらっしゃるんです。
 でも、特別なモノをお使いでもないのにあの美しさは罪作りです、三蔵様v
 
 
#3.三蔵様の養い子
 夕方の街外れで三蔵様の養い子の悟空を見かけました。
 小さくて、そのくせ強くて、笑った顔が向日葵のようだと誰もが言います。
 俺は悟空の後を思わず追っかけてしまいました。
 最近、三蔵様のお仕事がお忙しいのか街へ一つも下りてきて下さらないから淋しかったのかも知れません。
 俺は距離をあけて悟空の後を追い続けました。

 悟空は道草の名人なようです。
 道端に咲く花に話しかけたり、枝にとまる小鳥たちに笑いかけたり、茜色に染まる空を見上げたり。
 片時もじっとしていないのです。

 悟空の背中に揺れる長い髪は三蔵様がご自分で結ってあげていると噂で聞きました。
 いいなあ…俺も一度でいいから髪を三蔵様に梳かして貰いたいです。

 いつの間にか道は寺院へ続く道にさしかかって…
 街道との分かれ道に三蔵様がいらっしゃいました。
 俺の心臓が撥ねました。
 悟空が三蔵様のお姿を見つけると、転がるように走ってその細腰に抱きついたのです。
 お、俺も…と、一瞬、目の前がピンクに染まりました。

 はっと、我に返ると、三蔵様と手を繋いだ悟空の姿が夕闇に溶けていました。

 微笑ましい姿なのに俺の胸は羨望と嫉妬に夕焼けのような赤に染まってしまいました。

 悟空、一度でいいから変わって。

 
 
#4.触っちゃった?!
 三蔵様のお姿をちらりとお見かけしたので、追っかけたらそのお背中にぶつかってしまいました。
 慌てて謝れば、一瞬、睨まれただけで許して頂いたのです。

 ぶつかった一瞬に薫った三蔵様の香りと感触を俺は一生忘れません。
 そして、ぶつかった顔も当分洗えません。

 
 
 
#5.挨拶を交わす仲
 毎月、三蔵様にちなんで三の付く日に寺院へお参りを始めてずいぶんと経ちます。
 その間に三蔵様にお会いしたのはほんの数えるほどで、期待したほどではありませんでした。
 だが、何故か三の付く日は本殿で笙玄さんの姿をよく見かけました。
 理由は分からないのですが、お参りに行くたびに姿を見かけるのす。
 きっと、寺院のお仕事で表に出て来てるんだろうなあと思っていたら、偶然、笙玄さんが落とした扇を拾うチャンスを得ました。

「落としましたよ」

って、その扇を拾って声を掛けたら、笙玄さんが最初びっくりしていたけれど、私が差し出した扇に気が付いて嬉しそうに笑ってくださったのです。
 そして、それ以来顔を合わすと黙礼をするようになりました。
 が、今では挨拶を交わすほどに親しくして貰っています。
 もっと親しくなって三蔵様の普段の様子を聞き出したいです。

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