───どんなあなたでも、大好き…… 誰よりも綺麗なあなただけが、僕の宝物
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花束を君に (6) |
眠る悟空の瞼が震えた。 その胸にまっすぐに突き刺さる声。 トクンと、胸が鳴った。
……さん…ぞ…
ゆっくりと悟空の黄金が開いた。 「な…何?…何で?」 視線は彷徨っても、首は上を向いたまま、ぴくりとも動かせない。 不安が押し寄せてくる。
いい加減疲れて息を吐いたその時、人が近づいてくる気配を感じた。 敵か、味方か、判断が付かない。 悟空は逸る気持ちを押さえて、こちらへ来る者を待った。
足音が聞こえると同時に、聞き慣れた銃声が聞こえた。 「…さん…ぞ?」 足音の聞こえる方へ無理に視線を向ければ、金色の長い髪をした人間が小脇に耶斗を抱えて走ってくるのが見えた。 悟空は三蔵を呼ぼうとして、開いた口をそのまま閉じて、自分のすぐ側に立つ金色の人間を見上げた。
この人は…確か、耶斗の大切な…人、えっと……金蝉
呆けたような記憶の糸を辿って、悟空は思い出した。 「耶斗っ!」 その声に金蝉が振り返った。
「金蝉、こーんぜん!」 背中に抱きついてくる幼子の重さに金蝉は、二つ折りになりそうな身体に力を入れてその身体を受けとめる。 「なあ、なあ、あれ何?虹っていうのか?」 長くたなびく瑞雲を悟空は見上げて、その金眼を眩しそうに眇めるのだった。
いつ見ても、二人は仲むつまじく、親子のようにも恋人同士のようにも見えた。 澱んだ暗闇から手を伸ばしても届くことはなかった。
「なぜ…?」 悟空の意識は戻らないはず。 ざわざわと洞窟がざわめきだした。 そう、大地が動き出したのだ。 「何故、目が覚めて…」 周囲の様子など目に入らぬ様子で、金蝉は寝台に身体を飲み込まれつつある悟空を見つめた。 「三蔵──っ!!」 同時に銃声が響いた。 大地は知った。 「何をした」 地を這う声が、金蝉を打った。 金蝉は耶斗を三蔵に投げつけるとすぐ、寝台に飲み込まれながらも身じろぎ、抜け出そうとする悟空の胸に手を掛けた。 手に入らないのなら壊してしまおう。
誰か、見つけて…私を見つけて…
金蝉の手首から先が悟空の胸に沈んだ。 「!!」 悟空の金眼が見開かれる。
そして───
確かに心臓に手が触れていた。 悟空の口から悲鳴が、迸った。 と、同時に凛とした声が、浄化の力を解き放った。
「──魔界天浄!」
舞い上がる経文と一緒に浄化の光は、全てを巻き込んでゆく。
浄化の光は洞窟の天井を突き破り、あらゆるモノを白く染め上げた。
白い自分。 綺麗な自分。
ひときわ明るく辺りを染め上げた光は、唐突に消えた。
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