三蔵のお気に入りの場所にも桜の木が何本かあって、それが何処よりも綺麗に咲いてるのを昨日見つけた。 でも…見たかったな。 俺は、桜の木の根元に座って、幹にもたれた。 今日は、天気が良くて、暖かくて、気持ちいい。 誕生日って言うのは、人間が生まれた日のことを言うんだって。
嬉しかった。
でも、でも、俺は三蔵が居てくれるだけでいい。 それに今日が誕生日だって決めてくれたのは三蔵。 三蔵も本当は、自分の誕生日を知らないんだって。
でも、内緒。
寺の奴らは、三蔵の誕生日を間違って覚えてるから、ホントのことを知ってるのは俺だけ。 毎年、三蔵の傍に一日居るのが、三蔵へのプレゼント。 だ、か、ら、俺の誕生日も一日、三蔵が傍に居てくれたらいいのに。
へこんできた気分が、桜に伝わったのか、さわさわと枝を揺らして慰めてくれる。 大地の友達は、みんな大好き。 嬉しいけど俺は、還らないって決めてるんだ。 あ、そう言えば前に、笙玄が、 「悟空が笑ってくれていると、それだけで幸せになります」 って、言ってくれた。 「お前は笑ってろよ、悟空」 って。 俺、そんなにいつも笑ってるかな? だって、楽しいし、嬉しいし、幸せだから。 そう言ったら、桜の木も草も風まで、みんなが笑った。 俺、バカにされてる? 拗ねてやろうかと思ったら、三蔵がこっち来る気配がした。 何でもいいや。 今日だけは傍にいて欲しいから。 うん、俺がいつも笑っていられるのは、三蔵がね、 「お前は、笑ってろ」 そう言ったからなんだからね。
ほら、茂みの向こうに金色が、見えた。
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