青空に虹の雨が降る。
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金色のパズル 銀色のクレヨン (2) |
どこからか赤ん坊の泣き声が聞こえる。 夢うつつで、金蝉は朧に眠りの淵から浮上した意識の隅で考える。 火の付いたように泣き叫ぶ赤ん坊の泣き声。 「悟空!」 ベットから飛び出ると、傍らのベビーベットへ駆け寄る。 「…すまん」 声も枯れよと泣く我が子をそっと抱き上げ、金蝉は宥めるように小さな背中をぽんぽんと叩く。 「どうした?恐い夢でも見たか?」 優しい声音で話しかけながら、涙に濡れた頬を拭ってやる。 「落ち着いたか?」 ゆらり、ゆらりと自分の身体を揺らしながら金蝉は、静かに自分を見上げてくる悟空に話しかける。 「母親の夢でも見たのか?あいつは優しい奴だったから、お前を残して逝くことを酷く悲しんでいた…悟空、だから泣くな…あいつに怒られるだろうが」 指先で頬に触れると、悟空がふわりと笑った。
「おーい、金蝉、おむつはコレで良いのか?」 自宅近くの大手スーパーに、捲簾と捲簾の息子、5歳になる悟浄と天蓬、その息子八戒、5歳と一緒に金蝉は悟空を連れて買い物に来ていた。 流れ落ちる豪奢な金髪を無造作に一つに結い、ジーンズにシャツのラフな姿に、愛くるしい赤ん坊を片手に抱いてカートを押す姿は、買い物客の視線を独占する。 紙おむつが所狭しと並ぶ棚から青いパッケージのおむつを金蝉に見せて、捲簾が確認する。 「サイズが大きい。もう一つ下のサイズでいい」 捲簾はサイズの確認をして、それを二つカートに入れた。 「父さん、天蓬が、えっと…天花粉を買っといてって言ってた」 捲簾が感心する。 「あれ、気持ちいいもん。な、悟空」 金蝉の腕の中の悟空に同意を求めるように笑いかけると、悟空が声を立てて笑う。 「金蝉、いい?」 金蝉から悟空を受け取って、悟浄が抱いた。 愛くるしく、大きな金色の瞳の赤ん坊を抱いた深紅の髪に紅玉の瞳を持った子供の姿は、父親であろう美丈夫の二人同様、人目を惹いた。
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