Love・autumn 〜俺と猿。〜
「可愛いですねぇ・・・。」
マックの帰り道、ジャケットのポケットに両手を突っ込んだまま、八戒が呟いた。
あ〜ぁ、なに嬉しそうな顔してんだか。
「俺?」
“可愛い”の指す人物が誰かを知っていながらも、ボケてみる。
「えぇ、そういう事にしておきましょ。」
ボケたのを分かって軽くあしらうんだもんなぁ、冷たいヤツ。
ちぇ、っと言ったら、
「拗ねてないで。大人なんでしょう?」
今度は頭撫でてきやがったッ(怒)。
どー考えてもお前。
それはガキ扱いダロ?!
「どーせ俺は外見大人の、中身はお子ちゃま星人だよっ。」
「何処の星の人ですか、貴方は。」
ちょっと困った様に笑ってみせて、その実、なんにも困っちゃいねぇんだよな。
ま、そんな顔のお前もスキだったりもするんだケド?
「俺お子ちゃまだから、ここでチュウしてくだちゃいっ。」
よく分からない、お子ちゃまじみた台詞を吐いてみた。
これっ位我が儘言ったって、いーよな?
お前、さっきまでどんな顔であの猿見てたと思ってんだよ。
挙げ句。
『可愛いですねぇ・・・。』
だと?!
お前、俺には邪険にするクセに、なんであの猿にはっ!
あの猿には優しくすんだっっ!!!
「悟浄。」
「・・・・んですか?」
「ちょっと屈んでもらえますか?」
「は?」
「いいから。屈んで下さい。」
「・・・・・はいよ。」
ちぇ。
もう一回舌打ちをして、言われたとおりに屈む。
ちゅ。
「はぇ?」
地面にのの字を書く様に屈み、目を閉じて俯いていた俺としては。
八戒の行動を理解するのに暫く時間がかかった。
だってよ?
額に感じた、柔らかな温もり。
人影はないとはいえ、こんな所でするの、嫌がってただろ?
それ知ってて、キスしねぇだろうな、と思って言った台詞だったのに。
「妬きました?」
んで、降ってくる、あいつの笑い声。
それは楽しそうに。
けど。
嬉しそうに。
「悟空に、妬きましたか?」
顔を上げると、首をちょっと傾げたアイツが目に入る。
そして目が合った。
あいつの瞳。
宝石の様な、深い緑。
眼鏡越しに見えた、目尻の少し下がった優しい瞳。
「お前、もしかしなくても、・・・わざとだろ・・・。」
その綺麗な瞳から視線を逸らして、思った事を言ってみる。
「ヤキモチを妬いた悟浄も、大好きですよ(笑)。」
確信犯。
そんな言葉がぴったりだ。
ちっきしょ。
笑い続ける八戒の腕を、俺は屈んだ姿勢のままちょっと強く引っ張った。
「ぅ、わっ!」
俺に倒れ込む八戒を捕まえる。
「急に何するんですかっ、悟浄!」
焦った様に腕の中で怒る八戒。
俺はその顔を見て、ちょっとだけ意地悪く笑った。
「仕返し(笑)。」
少しずづ沈んでいく太陽に背を向けて。
怒ったままの八戒に、・・・・・軽く口づけた。
end
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